日本では、がんは死亡原因の第1位で、3人に1人ががんで死亡し、2人に1人ががんになっています。
高齢化に伴いより、がんの患者数は増加する傾向にあります。がん患者さんは、がん自体の症状の他に、痛み、倦怠感などの様々な身体症状や、抑うつ、悲しみなどの精神的な苦痛、経済的な問題や家庭での役割喪失などの社会的苦痛、生きる価値や意味を見いだせないといった「スピリチュアル・ペイン」を経験することがあります。
「緩和ケア」では、がんと診断されたときから、治療後まですべての時期において、これらの苦痛を和らげ、患者さんやご家族のQOL(Quality of Life;生活/生命の質)を向上させるための治療・ケアを提供します。緩和ケアは、様々な症状、苦痛に対応するため、医師・看護師・薬剤師・栄養士・臨床心理士・リハビリテーションスタッフ・医療ソーシャルワーカーなど、多職種のチームで行われ、定期的なカンファレンスが開かれています。
われわれメンタルクリニックでは、精神科医、精神看護専門看護師、臨床心理士が、緩和ケアチームに加わり、がん患者さんの精神症状の対応、自殺企図・自殺予防に向けた取り組み、鎮静を含めた終末期の問題や、意思決定能力の判断などの倫理的問題への対応、家族・遺族ケア、意思決定支援を含む医療者・患者間のコミュニケーション支援など、多岐にわたる重要な役割を担っています。
緩和ケアチーム診療加算要件には、常勤精神科医師の存在が必須です。また、緩和ケアが広く普及していくとともに、がん患者さんやご家族の精神心理的な苦痛への対応の要望も高まっていて、総合病院精神科診療において緩和ケアの重要性は増大してきています。