診療の特徴

眼球運動による脱感作と再処理|EMDR

EMDRイメージEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は、1989年にアメリカのフランシーン・シャピロ氏によって発表された心理療法です。

ある日の散歩中、「嫌なことを考えながら、眼球を左右に素早く動かすと気分が楽になる」ことに気付いたシャピロ氏は、ベトナム帰還兵、レイプ被害者、虐待のサバイバーの方々を被験者にして、EMD(※1990年よりEMDRの名称に改称)を実施したところ、「一回の面接で被験者全員の苦痛がゼロ近くに低下する」という結果を得ました。これを発表した彼女の論文は、世界中に大きな驚きと反響を与え、現在では、世界各国のPTSDの治療ガイドラインに推奨されていて、2013年にはWHO(世界保健機関)により、最も安全で効果的なトラウマ治療と認定されています。

EMDRのモデル によれば、心身の問題の多くは、トラウマ的な辛い体験の記憶が処理しきれず、未消化になっていることに起因するとされています。あるいは、本人にとってはそれほど重大だと思っていない体験の記憶も、意外と現在に影響を与えているとされます。それらの体験をしたそのときの認知、情動、身体感覚などが細かく切り離されてしまい、統合・消化されないまま記憶に保存されます。

また、その時に「自分は駄目な人間だ」、「弱い」、「人に愛されない」などの否定的な自己イメージも形作られて、独立して保存されてしまいます。身体的な記憶としても保存されています。それらが尾を引いて、日常生活や対人関係、何かパフォーマンスをするときなどの似たような場面で足を引っ張り、心身の問題を引き起こすと仮定されています。

EMDRでは、それらの記憶やイメージを、本人が本来持っている回復力につないで統合し、自然な消化を促進することで、心身の問題を解消すると考えられています。EMDRの左右交互の刺激が、脳の神経系に働きかけて滞っている情報に変化を起こすため、心のどこかに落ち着いていくプロセスを非常に短時間に進めることができます。

また、従来の治療法では、辛い出来事のすべてを細かく語ることが必要とされたのに比べて、EMDRでは詳細を語らなくても治療を進めることができ、短時間で改善が進むため、辛い出来事やトラウマを思い返して直面する時間が短くてすむことも大きな特徴です。

幼少期に共感された体験の多い人は、大きくなってから受けたトラウマによる問題は3~12回程度の面接で改善します。幼少期からの慢性的なトラウマや不適切な養育がある人は、本人の中に肯定的な体験の感覚や感情を築き上げて、安心・安全感を高めてから大元のトラウマに取り組んでいきますので、それよりも時間はかかりますが、よりスムーズに着実に回復の道に向かいます。

過去の否定的な体験の記憶を処理できるうえ、認知行動療法や対人関係療法やその他のカウンセリングと組み合わせて使えるので、PTSDのほか以下のような症状の改善例が認められ、日本でも多くの精神科医などの医師や臨床心理士が、EMDRを治療に役立てています。

うつ
人格障害
解離性障害
統合失調症
恐怖症
強迫性障害
パニック障害などの不安障害
加害者の矯正

死別による悲嘆のケア
ターミナルケア
ひきこもり
身体表現性障害
重篤な身体疾患(ガン、幻肢痛)の受容
スポーツなどのピークパフォーマンスの創出
過去の嫌な記憶が原因で阻害されている感情や行動 など

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